モバイルバッテリーの規制が強化されます|丸形PSEからひし形PSEへ

スマートフォンなどの充電に欠かせない「モバイルバッテリー」。

現在、モバイルバッテリーは電気用品安全法の規制対象となっており、製造事業者や輸入事業者には、技術基準への適合確認やPSEマークの表示などが求められています。

このモバイルバッテリーについて、今後、規制がさらに強化される方向で検討が進められています。

大きな変更点は、現在の「丸形PSE」から「ひし形PSE」へと、求められる手続きが変わることです。

どう変わるの?

現在のモバイルバッテリーは「丸形PSE」

現在、モバイルバッテリーは電気用品安全法上の「リチウムイオン蓄電池」として規制されています。

製造事業者・輸入事業者は、定められた技術基準に適合していることを確認したうえで、丸形のPSEマークを表示する必要があります。

製造事業者・輸入事業者自身で技術基準に適合していることを確認し、丸形PSEマークを表示という流れです。

  1. 製造事業者・輸入事業者自身で技術基準に適合していることを確認
  2. 丸形PSEマークを表示

今後は「ひし形PSE」へ

今回の制度改正では、モバイルバッテリーについて、現在よりも厳しい安全確認を求める方向で検討されています。

大きなポイントは、事業者自身による確認だけではなく、第三者機関による「適合性検査」が必要になることです。

現在と同じように、製造・輸入事業者自身で技術基準に適合していることを確認したうえで、第三者機関による適合性検査を受検し、 ひし形PSEマークを表示するという流れです。

  1. 製造事業者・輸入事業者自身で技術基準に適合していることを確認
  2. 第三者機関でのダブルチェック
  3. ひし形PSEマークを表示

「ひし形PSE」は、特定電気用品に表示されるPSEマークです。一般的な電気用品に表示される丸形PSEとは異なり、より厳しい規制が設けられています。

第三者機関による「ダブルチェック」が必要に

適合性検査では何が行われるのでしょうか。

今後の制度の詳細については、これから技術基準や品質管理要求事項などが具体化される予定です。

ですが、基本的にひし形PSEマーク対象製品については、製品そのものの検査に加えて、製造工場についても確認を受ける必要があります。

つまり、製品が基準を満たしているかだけではなく、その製品を継続的に適切な品質で製造できる工場なのかという点についても確認されることになります。

また、第三者機関による検査に合格すると、証明書が発行されます。

この証明書には有効期間が設けられるため、事業者側では有効期限を管理し、期限が切れる前に再度検査を受けるといった対応も必要になります。

また、製品検査に加えて工場の検査も必要となるため、従来よりも検査にかかる時間や費用が増えることも考えられます。

第三者機関による「ダブルチェック」(適合性検査)では…
  • 製品検査だけでなく、工場検査もあわせて必要になります
  • 検査に合格すると証明書が発行されますが、この証明書には有効期限があるため、期限が切れる前の再受検など、継続的な管理が求められます
  • 検査項目が増える分、当然ながらコストの上昇も見込まれます

今後のスケジュール

現時点で示されている今後のスケジュールは、次のようになっています。(案のため、変更の可能性もあります。)

2026年8月31日
産業構造審議会 製品安全小委員会にて、制度改正の方針が提示・確認
2026年9〜11月
電気用品調査委員会にて、技術基準や品質管理要求事項が具体化
2026年12月
同小委員会にて、技術基準案が提示・確認
〜2027年2月
政省令が公布
2027年3月
施行(経過措置1年)、登録検査機関による適合性検査が開始
2028年3月頃
経過措置が終了・丸形PSEマークのモバイルバッテリーの販売禁止

2026年9月現在、具体的な技術基準や検査内容などがすべて確定しているわけではありません。

そのため、実際にどのような検査が必要になるのか、どのような書類を準備する必要があるのかといった詳細については、今後の政省令や関連する基準等を確認する必要があります。

2028年3月以降、丸形PSEの製品はどうなる?

ここで注意したいのが「現在流通している製品」です。

今回の制度改正によって、すでに消費者の手元にあるモバイルバッテリーを回収しなければならなくなるわけではありません。

電気用品安全法は、製造・輸入・販売などの事業者による流通を規制する法律です。

そのため、すでに消費者の手に渡っている製品について、今回の制度改正だけを理由として使用できなくなるものではありません。

(もちろん、通常の製品事故や安全上の問題が確認された場合には、別途リコール等の対応が必要になる場合があります。)

一方で、事業者が保有している「流通在庫」については注意が必要です。

電気用品安全法では、規制対象となる電気用品について、必要な表示等がない製品を販売することはできません。

2027年3月の施行から1年間(2028年2月末まで)は「経過措置期間」として、丸形PSEのまま販売することが認められる見込みです。

ただし、経過措置が終了する2028年3月以降、旧制度の丸形PSEのままのモバイルバッテリーについては、販売できなくなる可能性が高いと考えられます。

不良在庫化を防ぐためにも、小売店や卸売事業者、輸入事業者などは、今後の制度の詳細を確認しながら、在庫についても計画的に対応していく必要があります。

​ POINT
  • エンドユーザー(消費者)の手元にある在庫→影響なし
  • 小売店・卸店の流通在庫→経過措置終了後の2028年3月以降は販売ができない見込み

なぜ規制が強化されるのでしょうか?

今回の制度改正の背景には、モバイルバッテリーによる事故の増加があります。

安全性をより確かなものにするための規制強化であり、市場から不適切な製品を減らしていく「健全化」に向けた取り組みといえます。

経済産業省によると、モバイルバッテリーの事故件数は増加傾向にあり、2021年には51件だったものが、2025年には192件と、わずか4年で約4倍にまで増加しています。

モバイルバッテリー 事故発生件数の推移(経済産業省資料より)
2021年
51件
2022年
56件
2023年
82件
2024年
125件
2025年
192件

とりわけ2025年7月の山手線、同年8月の東海道新幹線・上越新幹線など、公共交通機関内での発火・発煙事故は、多くの乗客を危険にさらす社会的な問題として報じられました。ニュースで取り上げられる機会も多く、世間の関心を集めている状況です。

こうした状況の中、経済産業省は2026年2月、販売事業者81社に対して、製造・品質管理体制や安全に関する事項について改めて確認を要請しています。

その中では、製造工程管理、異物混入対策、品質管理体制、工場監査の強化、セルや機器の安全設計、リコール対応などについて確認を求めています。

こうした背景から、信頼できる安全性の担保されたモバイルバッテリーを市場に流通させることが、製造事業者様・輸入事業者様・販売事業者様に求められています。

このような一連の状況を踏まえると、今回の制度改正は、モバイルバッテリーについて製品そのものだけでなく、製造工程や品質管理まで含めて安全性を確認することで、市場に流通する製品の安全性をより確かなものにしていくための取り組みといえます。

おわりに

今回の制度改正によって、モバイルバッテリーを取り扱う事業者には、これまで以上に製品の安全性や製造・品質管理体制が求められるようになります。

2026年9月現在では、今後の技術基準や具体的な検査内容など、まだ確定していない部分もあります。

具体的な技術基準や検査項目が2027年2月ごろ公布されると、必要な対応も明らかになっていくでしょう。

モバイルバッテリーを取り扱う事業者の方は、制度が確定してから慌てて対応するのではなく、今のうちから今後の動向を確認しておくと安心です。

当事務所では、お客様の取り扱い製品に合わせて最新情報を共有しております。

不安な点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

やすだ行政書士事務所のイメージ
やすだ行政書士事務所
輸入専門行政書士事務所の安田俊子(特定行政書士)です。 10年以上輸出入業務に携わってきた経験から、主に電気用品(PSE)などの輸入関連手続きや法務支援を得意としております。 また、私自身子育て経験があり高等学校教諭一種免許(英語)を保持していることから、子ども関連事業の法務サポート(子どもPSCやこまもろう認定申請など)にも力を入れております。
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