【最新】試買テスト報告書にみる電気用品の安全性トレンド
輸入した電気用品が、経済産業省の『試買テスト』で抜き打ちチェックされる可能性があるのをご存じですか?

本記事では、経済産業省から公開されている最新の試買テストの結果から、不適合の傾向を分かりやすく解説します。
- 令和3年度(2021)
- 令和4年度(2022)
- 令和6年度(2024)速報
不適合数の推移
試買テストは、例年、60前後の品目、160~170前後の機種でテストされているようです。
「品目」と「機種」の関係をイメージするなら、ジャンルと商品名の違いのようなものです。

- 品目=大きなカテゴリ
例:電動力応用機械器具 - 機種=具体的な製品の種類
例:電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気製氷機
1つの品目に複数の機種が含まれるイメージです。
これまでの結果はこちらです。
| 令和3(2021) | 令和4(2022) | 令和6(2024) | |
|---|---|---|---|
| 品目 | 60 | 59 | 61 |
| 機種機種 | 176 | 163 | 164 |
| うち不適合機種 | 89 | 81 | 78 |
| 不適合割合 | 51% | 50% | 48% |

不適合割合は例年50%以上です。実は、輸入製品の不適合数は国内製造品に比較して多く、不適合の90%以上が輸入製品です。
電気用品の輸入ビジネスを行う方はこの試買テストの結果を読み込み対応することで自らのリスクを低減させることにも直結します。
不適合の内容|どんなことでOUTになるの?
ここからは、項目が詳しく公開されている令和3(2021)年、令和4(2022)年のデータを中心に、不適合品の内容を詳しくみていきましょう。
1) 表示の不適合
もっとも多く確認されているのが「表示」に関する不適合です。
まず、令和3(2021)年ですが、表示に関する不適合は30.94%と最多となっています。
| 不適合項目 | 不適合数 | 割合 |
|---|---|---|
| 表示 | 69 | 30.94% |
| 空間距離 | 30 | 13.45% |
| 過充電保護 | 19 | 8.52% |
| 雑音の強さ | 17 | 7.62% |
| 形状・組立・操作 | 16 | 7.17% |
| その他 | 16 | 7.17% |
| 取扱説明書等 | 15 | 6.73% |
| 絶縁構造・性能 | 14 | 6.28% |
| アース機構 | 14 | 6.28% |
| 消費電力等の許容差 | 7 | 3.14% |
| 平常温度 | 6 | 2.69% |
| 合計 | 223 | 100% |

令和4(2022)年も30.00%と一番多い不適合となっています。
| 不適合項目 | 不適合数 | 割合 |
|---|---|---|
| 表示 | 60 | 30.00% |
| 形状・組立・操作 | 38 | 19.00% |
| 過充電保護 | 22 | 11.00% |
| その他 | 18 | 9.00% |
| 空間距離 | 16 | 8.00% |
| 雑音の強さ | 14 | 7.00% |
| 取扱説明書等※2 | 10 | 5.00% |
| 絶縁構造・性能 | 8 | 4.00% |
| 消費電力等の許容差 | 6 | 3.00% |
| アース機構 | 4 | 2.00% |
| 平常温度 | 4 | 2.00% |
| 合計 | 200 | 100% |

表示の不適合で多いものは「PSEマークの表示がない」や「届出事業者名」の表示がない、などです。
そもそもPSEマークを表示していないものは違法ですが、それ以外の不適合もあります。
届出事業者名や(特別特定製品の場合は)検査機関名の表示、など品目によって義務付けられている表示が抜けていた場合、「不適合」となってしまうのです。
2) モバイルバッテリーにおける過充電保護機能の不適合
リチウムイオン蓄電池を搭載するモバイルバッテリーは、近年特に注目されている分野です。その中でも「過充電保護機能」に関する不適合が問題となっています。

「過充電保護」とは??
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バッテリーや回路には通常、満充電に達した時点で自動的に充電を止める機能が、「過充電保護機能」 です。
リチウムイオン電池は、本来の容量を超えて充電を続けると 内部温度の上昇やガス発生につながり、最悪の場合は発火・爆発の危険があります。こういった危険を防ぐための機能が「過充電保護機能」なのです。
試買テストで過充電保護の不適合が確認された場合、
- 長時間の使用や不適切な充電環境で事故につながる可能性がある
- 特にモバイルバッテリーは持ち運び用途が多く、事故が社会的に大きな影響を与えやすい
といったリスクがあります。
リチウムイオンバッテリーはこれまでの試買テストで注目されている分野というだけでなく、市場自体も拡大しており、今後も重点監視対象となる見込みです。
まとめ
経済産業省の試買テストは、電気用品が市場に出回った後も安全性が担保されているかを確認する重要な仕組みです。

近年の結果から見えてくるポイントは以下のとおりです。
- 不適合の割合は依然として5割前後
→ 輸入品を中心に法令違反や安全性不足が目立つ - 最も多い不適合は「表示」関連(PSEマークや事業者名の欠落)
→ 表示のヌケモレは違法リスク直結 - モバイルバッテリー(リチウムイオン電池)の過充電保護は要注意
→ 市場拡大分野であり、重点監視対象
「輸入すれば終わり」ではなく、輸入前の技術基準適合・PSE表示の正確性・輸入後のフォローアップ体制までが輸入事業者の責任範囲です。
こうした対応を怠ると、
- 改善命令や表示禁止命令
- 罰則(法人は最大1億円の罰金刑)
- 事業の信用失墜
といったリスクにつながりかねません。
逆に言えば、制度を正しく理解し適切に準備すれば、安心して輸入ビジネスを拡大できるということです。
当事務所では、
- PSE輸入に必要な届出や試験のサポート
- 試買テスト結果から読み解くリスク分析
- 表示や書類作成のチェック
などを一貫してお手伝いしています。
不安な方はまずはお気軽にご相談ください。
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